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スーパーでの親子

COLUMN

 中国の子供向けお菓子マーケット

09/2021

「お菓子マーケットの規模」

中国におけるお菓子マーケットの売り上げ規模は年間6%で増加しており(図1※)、

2020年には6000億元(102兆円程度)を越えると推測してあります。

※”2019年子供向けお菓子市場調査白書”より抜粋

図1 2011年~2020年のお菓子小売りマーケット規模の推移

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「カテゴリー別マーケット規模」

カテゴリー別の市場規模の変化(図2)※から見ると、2010年からの10年間において、

すべてのカテゴリーでお菓子のマーケットは拡大しています。

中国の経済発展と共に大きく成長してきたお菓子マーケットですが、現状は商品の同質化が

生じています。商品間に決定的な差がなくなり、価格競争に陥りやすい市場構造になっています。

中国のお菓子マーケットでは、先進国に比べるとマーケティングが未発達です。

今後は、各メーカーが競争市場を勝ち抜くためにマーケティング戦略に注力していくだろうと

考えています。

※市場規模データはオンラインデータからACORNが抽出、整理

図2 ジャンル別の市場規模の変化

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「子供のお菓子消費」

マーケティング戦略にはターゲットの想定が不可欠です。

中国では子供にお金をかける傾向が顕著です。China Research Center for Children’s Industryの報告によると子供がいる家庭の80%では、消費支出の30%~50%を子供に充てています。子供用のお菓子の消費も月間お菓子購入費用(図3)は平均で800元(1.3万円)(2019年子供向けお菓子市場調査白書)、1,000元/月(1.6万円)を超える家庭も20.7%あり、積極的な消費を現していると言えるでしょう。

国国家統計局の2019年のデータによると、16歳以下の子供人口は約2.5億人です。さきほどの月間お菓子購入金額と掛け合わせると、年間売り上げ規模は、2.5億×1.3万円×12カ月=約39兆円にも上ります。因みに「e-お菓子ねっと」のデータによると2020年の日本の菓子小売市場規模は約3兆2242億円ですので、日本のおよそ12倍の市場規模ということになります。

子供のいる家庭の消費傾向や市場規模から、中国のお菓子関連会社は子供向けのお菓子マーケットが今後の成長の鍵を握っていると考えています。

図3 月間お菓子購入費の割合

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中国では肥満が社会問題になっています。子供の肥満も無視できないレベルに来ています。肥満に関して政府は「健康中国2030」という枠組みを作り、大人及び子供の肥満の改善についての指針を発表しました。業界団体としても「中国副食品流通協会」から2020年6月に子供向けお菓子の定義や製造基準が発表されました。企業としては子供向けに販売を加速したいところですが、お菓子は子供の肥満にも大きく関与していると考えられていますので、これからの子供向けお菓子の開発には、子供の肥満への配慮も求められます。

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「お菓子選ぶ母の意向」

中国の母親は図1の通り腸活、ミネラル、免疫力、脳によい等、子供の体や健康を気遣っています。この要素は数字がされておらず、感じ取ることが多いと思います。実際、商品を選ぶ時には図2の通り、オーガニックなどの天然系、栄養成分の組合せに注目して商品を選んでいます。それ以降にブランドにも注目していますが、オーガニックに比べれば大幅に低い数字です。中国の子供向けお菓子に有力な総合ブランドが存在していないのも原因ではないかと思います。

※データ”2019年子供向けお菓子市場調査白書”より抜粋

「母親世代別の嗜好性」

中国の1~3線都市(都市部人口が100万人以上の都市)の母親がオンラインで購入した、子供向けお菓子ランキングTOP5(図3)を整理してみました。母親の好みを覗いて見ると、80年代生まれは天然の食品を好み、90年代生まれは加工食品を好む傾向があります。筆者の経験からすると80年代生まれの子供にはお菓子の選択肢が少なく、焼き芋や、クルミなど地元の農作物しかなく、加工食品のお菓子が普通に変えるようになったのも1990年頃からでした。親の子供時代の経験も影響すると思いますので、次の世代の母親は加工食品にもっと馴染みやすいのではないかと思います。

※データは「2021子供向けお菓子消費洞察報告」よりの抜粋

図1 お菓子から求めるもの

図2 注目ポイント

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図3 1~3線都市 母親の購入TOP5 子供向けお菓子ランキング

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「子供向けお菓子の情報源」

子供向けお菓子の情報の入手は図4の通り、知人の推薦が圧倒的に高いです。これは中国の特徴の一つですが、全般的に医師などの専門家の信頼度が低く、そのため新米ママは知人の助けを求める傾向が強くなります。特に自分の家族、親戚の経験に頼ります。

ネット社会になり色々な情報をネットから得られるようになっていますが、子供については冒険が出来ないので、信頼のおける周囲からの情報を求めていると思います。

※データは”2019年子供向けお菓子市場調査白書”より抜粋

中国食品の安全性は消費者に信用されていませんので、母親の子供向けお菓子の選択は日本と比べると特に慎重だと感じます。筆者の日本での子育て経験から言うと、お菓子を選ぶ時の着目点はまずブランドです。栄養成分などはあまり気にしたことがなく、知人の口コミよりも医師や栄養士など専門家の意見を重用します。子供向けお菓子のマーケティングにおいては、中国は日本に遅れたステージにあるのではないかと感じでいます。

図4 情報源

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「よく売れているお菓子ブランド」

図1は、子供向けお菓子ブランドのネット販売売上を中国国内、海外別に並べたものです。中国の国内ブランドではナッツ類が4つ(2位、3位、6位、7位)ランクインしていますが、キャンディー・チョコレート類のブランドは一つもランクインしていません。一方、海外ブランドでは上位5ブランドは全てキャンディー・チョコレート類です。

中国のランキングにナッツ類のブランドが多くランクインしているのは、昔から天然素材のお菓子を食べていることやオーガニックを好む傾向がある為だと思います。キャンディー・チョコレート類では、マーケットは完全に海外メーカーに掌握されていると言える状況です。筆者も中国のキャンディー及びチョコレートブランドは思い浮かびません。

※データはCBNdataの「2021子供向けお菓子消費洞察報告」よりの抜粋

図1 お菓子ブランド ネット販売 売上ランキング

​順位  中国ブランド   海外ブランド   

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「ブランドに求めるもの」

図2は母親がブランドに求めているイメージです。子供向けのブランドであることが圧倒的に高く、次は専門団体の認証を得ていることです。食の安全にスキャンダルが多い中国では、子供向けお菓子に対して心配している母親の様子が思い浮かびます。中国の消費者は特に「特別仕様、○○御用達」など特別に制作したというワードを意識する傾向があります。子供への関心も高いですから、子供向けお菓子では特に意識されるのも当然です。

※データは”2019年子供向けお菓子市場調査白書”より抜粋

図2 母親がブランドに求めるイメージ

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「お菓子を最も選ぶ理由」

子供が幼い頃は母親が代わりに色々なことを決めます。年齢を重ねると自分の意志で決めるようになります。子供向けお菓子の選択について、0~3歳児の母親と6~14歳児(ほどんと自分で決められる年齢)それぞれがお菓子を選ぶ時の理由(図3、図4)を見ると、母親は知人の推薦、広告、子供用など外部情報を得て選びますが、子供は自分好みやパッケージなど主観的好みで選ぶ傾向があると思います。子供は栄養成分や安心安全などについて全く気にせず、見て気に入ったものを直感的に選ぶでしょう。

※データは”2019年子供向けお菓子市場調査白書”より抜粋

図3 0~3歳児の母親が選択する理由 (%)

図4 6~14歳児の母親が選択する理由 (%)

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「パッケージキャラクター」

ほとんどの中国の子供向けお菓子のパッケージにはアニメのキャラクターが利用されています。インターネットで売上ランキングTOP5位のキャラクター(図5)を見ると、全て海外のアニメキャラクターで、中国国産のアニメキャラクターはありません。2000年頃から海外アニメーションのテレビ放映が少なくなり、国産アニメが多く制作されるようになりましたが、中国の国産アニメのキャラクターは人気がなさそうです。売上ランキング1位、2位のマイリトルポニー、スポンジ・ボブは中国中央テレビの子供チャンネルで放送していました。

※データはCBNdataの「2021子供向けお菓子消費洞察報告」よりの抜粋

図5 キャラクターコラボレーション
売上ランキング TOP5

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そこで、中国中央テレビ子供チャンネルで放映、長期シリーズ化したキャラクター5つをビックアップしてみました(図5)。2000年以降、中国が国産アニメ発展の為の政策を実施後の作品です。インターネットの口コミを見ると〇〇のパクリだ、内容が子供向けではない、などのネガティブな意見が多く見られます。筆者の子供時代は日本のアニメも中央テレビで放送していました。子供時代に日本のアニメに慣れ親しんだ人からすると、現在の中国国産アニメは面白さやアニメーションの質が低いので、あえて見せようと思わないでしょう。人気のお菓子キャラクターに海外アニメが多いのは、親が子供に意図的に海外アニメを見せているのではないかと思います。

※中国中央テレビの放映チャンネルより整理

図6 中国国内アニメ ​有名キャラクター

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子供向けお菓子について、親は健康に対する影響を考えていますが、子供は自分が気に入る要素だけ見て選んでいる傾向があります。子供向けお菓子の理想的なアプローチは、親が安心する内容物、品質のお菓子を子供の好むパッケージで包むことです。ブランディングの際には念頭に置いておく必要があると思います。

中国お菓子業界は、今まで子供の健康に配慮した商品開発を行うことがなく、消費者に安心安全を伝えるブランディングもしてきませんでしたが、現在では、消費者の信頼に足るブランドになる為に様々な施策の導入を始めました。中国市場に参入にあたっては、今後の変化を注視していく必要があると思います。現状、子供向けお菓子については、中国国内メーカーに比べて日本のお菓子メーカーのブランド価値が優位にありますが、今後もその価値を維持し、消費者に正しく伝える為には徹底したデータ収集に基づくマーケティング施策の検討を行うべきです。

担当編集:崔 学龍

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