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実行中の子供たち

COLUMN

 中国における子供の肥満

Jun. 2021

「経済ともに増える子供の肥満」

北京大学医学部、首都小児科研究所、国務院農業部の食及び栄養発展研究所等複数機関が共同で2017年に「中国児童肥満報告」を発表しました。中国では1985年に7歳~18歳を対象とした、初めての「中国学生体質及び健康調査」を実施、その後、1995年、2000年、2005年、2010年、2014年と計5回、この調査が行われました。体重オーバー率(図1)と肥満率(図2)の経年変化からみると、どちらも増え続けていることがわかります。とにかく体重の重すぎる子供が増えている、これが中国の実態です。特に都市部男児が太っていることがわかります。

図1 児童の体重オーバー率

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図2 児童の肥満率

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※1985年~2014年「中国学生体質及び健康調査」により
 中国での児童の体重オーバー率及び肥満率は「中国衛生部計画生育委員会」が定めた年齢(7歳~18歳)ごとのBMIに基づいて判定しています。
 「肥満」の方が「体重オーバー」よりもより深刻と考えられています。

 

「2014年の内訳」

図3のように同調査で2014年には中国都市部の男児はおよそ4人に1人が体重オーバー、10人に1人が肥満していることがわかりました。農村部よりも都市部、女児よりも男児でより深刻な状況です。 日本在住の中国人(私もです)が日本の産婦人科、保育園、小学校等で、中国の子供は大きいという感想を頻繁に耳にします。半信半疑でしたが、この数字を見ると納得ができます。

※「中国学生体質及び健康調査」により

図3 2014年 児童体重オーバー率及び肥満率

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「地域別の子供の肥満」

児童肥満率の地域分布(図4)を見ると、最も深刻な都市部男児のうち、北京市、天津市、河北省周辺地域は18%以上と高い傾向にあります。ほかに山東省の農村部の男児の肥満率も都市部並みです。

7歳~18歳児の体重オーバー及び肥満率の経年変化から中国で子供の肥満が進行していることがわかりました。特に都市の男児の肥満率が高く、その中で北京市の男児の肥満率は18%以上です。北京の成人の肥満が25%程度であること合わせて考えると、男児がいる世帯で親子肥満が起きているのではないかと推量されます。これから、肥満児童が大人になることを考えると、中国の肥満改善の道のりは長いと言えます。

 

図4 2014年 児童体重オーバー率及び肥満率

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「伝統文化」と子供の肥満

伝統文化的には太っている子供は“健康”“綺麗”“裕福”などのポジティブなイメージです。逆に痩せている子供は“不健康”“醜い”“空腹”“貧しい”などのネガティブイメージなイメージがあります。そのため児童の肥満については、ネガティブイメージ持つことはありません。伝統文化の影響で、両親は子供の肥満について危機感を持つことがなく、正しい管理を行うことができてないと思います。

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「動的活動の減少」

経済発展によって中国での、自動車保有台数が20年前に比べて、大幅に増えてきました。そこで昔ならば登下校を徒歩或は自転車でしましたが、
現在はほどんとの地域では車で送迎するようになってきました。(図1、図2)
都市の不動産開発により、都市部の公園が少なく、子供の遊び場所が大幅に減りました。学業負担の増加と、TV番組、PCやスマホコンテンツ増加などで、室外スポーツをする児童が減っていました。これらの原因で、児童が動的時間より静的時間が増えて来たのが、肥満上昇の原因の一つと考えられます。

図1 中国 1978年と2015年の交通手段の変化

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図2 中国 1991年~2015年までの自家用車保有台数の変化

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「家庭収入が高いほど肥満率が高い」

世帯月収と児童の健康状態の関係(図3)からみると、収入が高い世帯ほど児童の栄養不良率は減っていますが、肥満率が上がる傾向があります。子供の肥満は裕福によるものだと言えるでしょう。

中国 世帯収入別 学齢児童栄養及び健康状況に関する報告から抜粋

図3 中国 世帯月収別 学齢児童栄養及び健康状況の関係

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中国人にとって子供は大切な宝です。小皇帝と揶揄されるように欲しいものを好きなだけ与えられる生活です。特に、裕福な家庭では顕著です。子供が食べたいと思うものを食べたいだけ与えているのに屋外活動量(運動量)が減っていることが、肥満の原因の一つだと推測します。筆者の経験によると、私の子供の時代はテレビ番組も少なく、放課後に外で遊ぶことが多かったです。今の子供は色々なコンテンツに囲まれている上に、塾などの勉強に充てる時間を取られます。また時間があり、外で遊ぼうと思ったとしても、都市部は不動産開発により子供が遊べる場所が明らかになくなってしまっています。 

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「間食する子供の増加」

中国健康栄養調査 (China Health and Nutrition Survey: CHNS)のデータを利用した、2012年「Asia Pac J Clin Nutr 」に発表した論文「Trends in Chinese snacking behaviors and patterns and the social-demographic role between 1991and 2009 」によると1991年から2009年の18年間で、3日に1回以上間食する人の割合が、2~6歳で2.5倍、7~12歳で3.8倍、13~18歳で5.4倍に増えました。(図1)

図1 3日間に1回以上間食をする中国人の割合

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「間食頻度の増加」

この論文によると間食する子供のうち、間食頻度も1991年から2009年にかけて増えて来ていました。(図2)間食する人の割合(図1)と間食頻度(図2)は2004年から2006年の間で、成長線がもっと上振れになっていす。2004年~2006年にかけて、間食の割合と頻度が大幅に増加する、イベントが発生しているのではないかと推測できます。筆者は2004年~2006年はちょうど大学に在学中でしたが、2004年までにはポテトチップスもあまり見当たらなかったですが、2006年には明らかに小売店にお菓子等の種類が大幅に増えてきました。

2006年頃は図3の通り中国の一人当たりGDPの上昇率が大きく上振れ時期でした。この時期は一般国民にも経済発展の恩恵が目に見えてきた時期だと思います。GDPと同じように間食の消費量も増え続けてきたと思います。

図2 1日に間食をする回数

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図3 中国 一人当たりの名目GDP(USドル)の推移

「食事パターンの変化」

2006年から2011年のCHNSデータの中で、6~14歳の子供データを分析した論文「Dietary pattern is associated with obesity in Chinese children and adolescents: data from China Health and Nutrition Survey (CHNS)」のによると子供の食事においては、伝統的な食事パターン(米、野菜、鶏肉、豚肉、魚の摂取量が多い)より現代の食事パターン(小麦、加工肉、ファストフードの摂取量が多い)のほうが肥満になりやすいと結論つけてあります。経済発展による食生活の変化が子供の肥満に影響を及ぼしていると思います。特にお菓子や、甘いジュース、ファーストフードは2000年代に入って大幅に増えました。

図4 7~18歳 児童 体重オーバー率、肥満率及び該当人口

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「子供肥満予測」

中国の子供の肥満率をもとに人口統計データから予測してみると、図4から見ると2020年には中国で体重オーバー及び肥満している児童が4千万人近く、2030年には5千万に近く達すると予想しています。


※出所:中国児童肥満報告
​※2020年及び2030年は予測値

 

中国の子供の肥満の原因は、経済発展によって、子供の室外活動量が減ったうえに、食事パタンの西洋化に変化したのが大きな原因ではないかと思います。中国政府としても肥満は無視できない大問題であるので、“健康中国 2030”の方針を発表しており、政府並びに企業にアナウンサーをしており、各地域官僚の指標としても使っているそうです。子供の肥満問題を解決すべく、子供向けの食品などにも指針が出てくるのではないかと思います。

担当編集 崔 学龍

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