COLUMN
【 中国経済 】
-中国の日常消費に見る変化-
伸びているのは「安い・便利・小さな満足」
2026/08
中国の消費は、すべてが弱いわけではありません。
中国国家統計局によると、2026年上半期の社会消費品小売総額は前年同期比1.3%増でした。一方、自動車を除く小売は2.8%増となっており、高額消費を除けば、日常消費は一定程度残っていることが分かります。特にオンライン消費は重要です。
2026年上半期の中国のオンライン小売は10兆715億元(約214兆3,000億円)で、前年同期比5.2%増でした。このうちオンラインの商品小売は4.8%増、オンラインサービス小売は6.0%増です。オンライン商品の中では、食品が16.8%増、衣料が6.2%増、日用品が1.3%増となっています。

大きな買い物は控える一方で、食品、飲料、日用品、化粧品、低価格の外食、オンラインサービスなど、日常生活に近い支出は続いています。
この変化を象徴するブランドも出てきています。
Luckin Coffee
Luckin Coffeeは2026年1〜3月期にGMVが141億元となり、前年同期比35.8%増でした。商品販売収入も前年同期比32.4%増となっています(出所:Luckin Coffee IR資料・2026年Q1決算)。高級カフェではなく、アプリ注文、クーポン、持ち帰り、低価格帯の商品を組み合わせ、日常的に買いやすいコーヒーとして広がっています。
※日本で言えば「スターバックスのプレミアム性」ではなく、セブンカフェ+マクドナルドコーヒー+アプリ値引き型チェーンに近いポジションです。
Mixue
Mixueは2025年の売上高が335.6億元となり、前年同期比35.2%増でした。2025年末時点で世界約6万店の店舗網を持ち、低価格のアイスクリーム、茶飲料、コーヒーを展開しています(出所:Mixue Group HKEX上場資料・2025年年次報告)。中国の消費者が求める「安いが、日常的に楽しめる」商品の代表例です。
※日本で言えば「サイゼリヤの飲料版」や「ドン・キホーテの低価格飲料カテゴリ」に近いポジションです。
農夫山泉
農夫山泉は2025年の売上高は525.5億元で、前年同期比22.5%増でした(出所:農夫山泉 2025年年次報告)。水だけでなく、茶飲料、機能性飲料、果汁飲料などに広げており、日常的な飲料需要の強さを示しています。
※日本で言えば「サントリー天然水+伊藤園+キリン午後の紅茶」を統合したようなポジションです。
MINISO
MINISOは2026年1〜3月期の売上高が56.9億元となり、前年同期比28.5%増でした(出所:MINISO Group IR・2026年Q1決算)。低価格の生活雑貨に加え、キャラクターIP商品を組み合わせることで、単なる日用品ではなく「小さな楽しみ」として消費されています。
※日本で言えば「3COINS+ドン・キホーテ+キャラクター雑貨店」を組み合わせたポジションです。
PROYA
PROYAは2025年上半期時点でオンライン直販の比率が72.9%を占めており、中国化粧品市場ではオンライン販売が極めて重要なチャネルになっています(出所:PROYA 2025年半期報告)。
※日本で言えば「資生堂の中価格帯ブランド」や「オルビスのD2C型モデル」に近いポジションで、特にEC依存度が高い点が特徴です。
これらのブランドに共通共通点は、「価格が手頃であること」、「オンラインやアプリで買いやすいこと」、「日常的に繰り返し買えること」、「小さな満足感を提供していること」です。
今の中国消費者は、高額な買い物には慎重です。しかし、毎日の生活を少し便利にしたり、気分を上げたりする支出は続けています。
この動きは、消費データにも表れています。
BainとWorldpanelの中国FMCG調査によると、2025年の都市部FMCG消費は金額ベースで0.9%増にとどまりましたが、販売数量は3.6%増でした。一方、平均販売価格は2.6%下がっています。つまり、消費者は買う量を大きく減らしているのではなく、より安い商品、よりコストパフォーマンスの高い商品を選んでいるということです。
さらに、プライベートブランドも伸びています。2025年の中国都市部FMCG市場では、プライベートブランドの比率はまだ約2%にすぎませんが、支出額は前年比57%増の327億元に達しました。これは、消費者がブランド名だけではなく、価格と実用性を重視し始めていることを示しています。
2026年の618商戦でも、この傾向が見られました。中国の「618」はEC最大級の年中セールで、各プラットフォームが大規模な値引きやクーポンを展開し、消費動向を測る重要な指標とされています。2026年618期間の全ネット取引総額は9,340億元で、前年同期比4.0%増でした。成長は続いていますが、以前のような急拡大ではなく、消費者はより慎重に、価格と必要性を比べながら購入しています。
現在の中国では高価格・高機能を前面に出す商品ではなく、消費者が日常生活の中で**「必要」「便利」「お得」「安心」「少し楽しい」**と感じられる商品です。
企業にとって重要なのは、中国消費を「弱い」と一括りにしないことです。
崔 学龍


.png)